犬の栄養を紐解く

ドッグフードと水だけで健康に犬たちが過ごしていけるのだろうか?

 

多くの人がこの問いに対して「Yes」と答えると思います。

 

ですが、果たして本当にそうなのでしょうか?

 

私は少し疑問に思います。

この問いに対する答えとして、人間の食生活についての歴史が一つのヒントになると思うので、ここで少し振り返ってみることにします。

 

実は栄養バランスが良かったのは狩猟採集時代

狩猟採集→農耕という歴史を経て私たちは豊かな生活を手にしてきました。

採れるか採れないかのその日暮らしの生活から、穀物を計画的に育て、定住することにより爆発的に人口を増やしていったのです。

 

多くの人が、狩猟採集生活から農耕することによって

安定的な暮らしと飢餓の心配がなくなり

人間にとって良い進化だったんだな

と思うかもしれません

(私もその内の一人でした)

 

ただこの常識は、今日では否定されています。

世界的ベストセラーである「サピエンス全史」によると、

実は狩猟採集生活は、多くの人が想像するほど貧しいものではなく

むしろ農耕民よりもずっと豊かだったようなのです。

 

色んな動物の肉や魚、貝類、木の実やキノコなど

手に入る食物は多様性があり

食べるものの種類は必然と多くなり

単一の作物に頼る農耕民と比べて

栄養バランスは格段によかったのだそう。

この食物の多様性という部分が

現代の犬たちの食事のあり方を見直す

一つのキーワードになるのではないか、と思います。

 

 

職業柄、たくさんのドッグフードを見てきました。

 

ドッグフードの材料はシンプルに分けると

・メインのタンパク源であるお肉やお魚

・野菜

・粒の形成に必ず必要なデンプン源(穀物や豆類)

・足りない栄養素を補うためのビタミン・ミネラル類の添加

と、このように大まかに分けることができます。

 

色んなドッグフードの色んな原材料を

たくさん見てきましたが

使っている原材料の種類はどのフードも

似たり寄ったりの材料を使っているな

というのが正直な感想です。

(原材料の質に関していえば大いに差はありますが)

 

「材料は似たり寄ったりでも栄養バランスが整っているから大丈夫でしょ」

と、思う方もいるかもしれません。

 ですが、、、

栄養学は完全に解明されていない

これは人間の栄養学で言われていることなのですが、

自然の食材にどんなミネラルやビタミン

栄養素が含まれているか

完全に解明されているわけではないということ。

 

私たちの健康に多いに役立っていると認識されている

食物繊維が厚生労働省の定める

必須栄養素に仲間入りしたのは

ついこの間の2000年のこと。

人間の栄養学ですら

まだまだ発展の途上にあるにも関わらず

犬の栄養学が完璧に解明されているとはとても思えません。

 

犬の平均寿命が伸びたのはドッグフードのおかげ?

ここ30年で犬の平均寿命は2倍に伸びました。

それは、昔の犬の食生活は人間の残り物をあげていて

栄養バランスが悪かった

ドッグフードの登場で飛躍的に寿命が伸びたんだ

と言われることもありますが

果たして本当にそうなのでしょうか?

 

30年前の犬の死亡原因1位はフィラリア症

次いで2位が交通事故。

昔はフィラリアで亡くなるわんちゃんが

非常に多かったんですね。

決して栄養不足が原因ではないんです。

 

もちろん、ドッグフードのおかげで

平均寿命が伸びた可能性は

多少あるとは思いますが、それよりも

・外飼い→室内飼いという環境の変化

・獣医療の発達

この2点が犬の寿命に多いに貢献したことは

間違いないと言えるでしょう

 

手作りごはんを食べているわんちゃんの方が長生き?

2003年ベルギーでこんな調査結果が発表されたのは

ご存知でしょうか?

さまざまな犬種、大きさ、生活習慣の

わんちゃんの寿命に関する情報を集めた結果

手作りごはんを食べている犬の方が、

ドッグフードだけをあげ続けた場合と比べると

32ヶ月(2.6年)も長生きしたという驚くべき調査結果が。

また、市販のフードにトッピングという形で

手作りごはんをあげていたわんちゃんも

平均15ヶ月も長生きしたことが明らかになりました。

 

犬は人間よりも4倍の早さで時間が過ぎていきます。

この2.6年という長さは決して無視できない長さですよね。

 

格段に栄養バランスは優れていると世間一般で思われている

ドッグフードと手作りごはんの

この寿命の差はなぜなのでしょうか?

 

一つの仮説として私が思うのは、まずは前述した

食材の多様性。そして鮮度。

この二つが大きく関わっているのではないかと思います。

 

昔の犬たちはねこまんま、と言われるように

お味噌汁とご飯とおかずの残り物をごちゃ混ぜにしたものを

与えられていました。

それは食材の多様性という点で見れば、実に豊かです

季節ごとに旬のものは違いますし、日本で言えばお味噌汁は

発酵食品で健康にも良いですしね!

 

そしてドッグフードと比べると鮮度が明らかに違います。

長期保存ができるように加工されたフードは、

かなりの時間をかけて

私たち消費者の元に届けられています。

ミールと呼ばれる肉粉を材料に使っているフードであれば、

肉粉にするときに高温の熱処理をされ、さらにドッグフードに加工するときに

また高温の熱を加えられているので

ねこまんまと比べるとその鮮度の差は明らか。

 

思うに、獣医療と生活環境の点を除けば

昔の犬たちのねこまんまごはんは

決して悪いものではないように思います。

 

 

理想の犬のごはんは「一つに絞らないこと」

ここまで読むと、ドッグフードはやめよう!

手作りごはんが良いんだ、と思うかもしれません。

 

私は実はそれもあまりお勧めはしていません。

地震や災害が多いこの日本で

手作りごはんだけしか食べさせてこなくて

もし同行避難となった時のことを考えると

リスク回避のために1個か2個ぐらいは

これなら食べさせても良いかな、と思う

ドッグフードを見つけておくことも大切だと思います。

 

わんちゃんたちにはドッグフード含め

色んなごはんをあげてほしいと思っています。

 

朝はドッグフード、夜は缶詰とか。

朝はドッグフードにトッピング、夜は手作りごはんとか。

もちろんPoco a pocoのフレッシュフードをトッピングで

使っても良いですし、何個か解凍して

そのままごはんとしてあげても

良いと思います。

 

私たち人間のご飯に色んな食べ物があるように

わんちゃんたちにもドッグフード以外のごはんが

実にさまざまあるんです。

 

食のバラエティを増やすことによって、それが結果的に

「健康」かつ「長生き」に繋がると思っています。